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2025年1月

Kioのペイント物語

また寒さがぶり返してきましたね。

でも日増しに、日が長くなっていくのが実感できて、
この季節、これが嬉しい。

「正月を過ぎると、一日1分ずつ1分ずつ、日が長くなっていく」
ひいおじいさんがいつも言っていたものだわと、
曾祖父を慕っていた母が、この時期になると思い出しては言います。

そして私はそれを聞きながら、
季節が確かに移ろうことの喜びや、何か明るい兆しのようなものを感じています。

 

 

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このところのKioは、家具のペイントに精を出しています。

使っているのは、アニースローンのチョークペイント。

もう12年くらい、これ一辺倒です。

 

色がきれい。
少し大げさな言い方かもしれませんが、芸術的とさえ思える。

これがアニースローンを使ういちばんの理由ですが、
成分が良いのも気に入っています。

私は化学物質に敏感な方で、
塗料はすぐにリンパが張ったり、目がチカチカすることが多かったのですが、
アニースローンにはそれがありません。

 

塗り上がりの質感も好き。

「石膏質」と、すぐにお客さまやHPの説明文で語ってしまうのですが、
それだけではない・・・

とろりとした濃厚さがあり、
家具にわずかに厚みを出してくれる・・・・

「きれいなお化粧をしたみたいな」
そんな表現がふさわしいのかな、
家具が洗練されたような感じになるんですよね。

あるいは「リッチな」。
これはアニー・スローン本人がYouTube動画で言っていた例えなのですが、
なるほど、本当にそうだなあと思いました。

 

さいきんの塗装は、こちら。

 

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もともとはこんなふうでした。

マホガニーの素材も気に入って買い付けたのですが、
サイドパネルに亀裂がひとつあり、
パテ修正をほどこしたにあたって、
全体をリペイント。

ダークワックスで経年変化や奥行を出す予定でしたが、
この家具は〝面〟が多い(装飾や曲線などで盛り上がった部分が少ない)ので、
せっかくのエイジングも汚れみたいに見えてしまうかも・・ということで、
ペイント&クリアワックスの、
いちばんシンプルでベーシックな仕上げに。
 

 

リペイントするのは、上のような理由から。

あるいは、買い付け時にすでにリペイントされていても
その様子や状態が「うーん・・・」と思える時があるという理由から。

なので、なるべくオリジナルを残したいとは思っています。


でもそんななか〝家具を長持ちさせる〟という観点からも
リペイントしていきたい気持ちになっています。

塗装本来の目的ですね。

「Kioのオリジナル」みたいに展開していけそうですし、
色味やその組み合わせを考えるのは楽しいです。

 

ローラーや噴き付けなどの
フラットでムラのない仕上げも好きですが、
刷毛塗り仕上げも大好き。

とくにチョークペイントは、刷毛のテクスチャーがよく似合うんです。

 

エイジングもですが、クラッケルなど・・・・・
色んな技法を身につけていきたい。

家具とにらめっこしながら、
それぞれに合ったお化粧をほどこしてあげたいです。

 

 

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「Kioには色がある!」
素敵なお部屋づくりをされているお客さまがそう言ってくれたことがあります。

まるでそのあとに「だから好きですよ」という言葉が続いたかのように聞こえて嬉しかった。

 

そう、色。
色なんですよね。
そこもやりたいんです。

オープン当初からずっとやっているのですけれどもね(笑)
あまり意識していなかったというか。

それだけ自分にとっては当たり前の色を、
もっと打ち出していきたい気持ちに、
素敵な塗料と前以上に向き合うようになって、
そして色々と思うところもあって、
すごくなってきています。

 

 

Kio 20年目へ

たいへん遅ればせながら・・・・
あけましておめでとうございます。

 

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この冬はどれだけ寒いんだろう・・って先が思いやられていましたが、
少し緩んでくれましたね。

夜、外に出ると星空が眺められる。
これくらいの寒さでしたら、冬もロマンチックに感じます。

 

2025年は、
Kioにとって20年目に入る、大きな節目の年です。

アメリカに買い付けに行くようになり、
現役のままマイペースで仕事を続けるディーラー達の姿に、

「いずれ徐々にペースダウンしていくのだとしても、私も生涯現役でいたいな」
と思うようになっていたので、
まだまだやっていくつもりなのですが、

半面、「こんなに続けてこれたなんて」という驚きもあります。

 

皆さまのお陰です。

本当にありがとうございます。

 

Kioは、
自分自身が〝部屋作り〟したくてもなかなか欲しいと思えるインテリアがなくて、

(当時はまだそんな感じでした。
Kioを始める直前まで仕事の関係で東京に1年住んでいましたが、
部屋で普通に使いたいような生活感あるインテリアって、少なかったです。
傘立てとか鏡とか必需品になるほど本当に見つからなかった・笑)

「それだったら自分で始めよう」
「そうすれば同じようなジレンマを抱えた人たちに喜んで貰えるかもしれない」

そんな想いから生まれた店です。

 

なのでお客さまもやはり「お部屋作りが大好き」なひとが多いです。

アンティークからどんどん広がって、
部屋や住宅の話題になっていく。

そしてお話ししているうちに、
「どうして世の中は同じような既製品で溢れてるんだろう」
「どうしてこんな使い捨ての風潮が広まったんだろう」
という問題に発展していきます。

 

「使い捨ての風潮が嫌い」
「全体主義の風潮も嫌い」
「コスト重視。これでほんとにいいのだろうか」

ああ、そうなんだな、
こんな、自分と同じ気持ちやいきどおりを皆さんも持っているんだ。

だからアンティークにたどり着くという順序もあるのかもしれない。
自分がそうだったみたいに。

 

アンティークと言う、きれいで、いっけん趣味の世界のような扉を開けて入ると、
そこは同志に会える場所でもあった。

これも20年かけて培った私にとっての財産。

とても大事です。

 

アンティークは昔に作られたもの。

それがまだ使うことが出来る。
素敵に感じられる。
新鮮にすら感じられる。

天然木で堅牢に作られたものだったら、
どこか痛んだりしたら削ったりペイントしたりなんかして、
そうやってすればいつまででも使い続けることが出来る。

高いものではけっしてない。

もしアンティークにあまり関心がなかったという方がいらっしゃったら、
いちどアンティークを選択肢に入れてみて欲しいです。

 

秋の終わりくらいに、
関東の同業者さんがKioを訪ねてこんな場所まで足を運んでくださいました。

初めてお話しするのに、
想いがまったくと言っていいほど一緒で、
同志はお客さまだけではないのだなあと感激したものでした。

私よりもキャリアの長い先輩。

「衣」にも関心をお持ちで、
「衣でも住でも、良いものを見る機会がどんどん失われてきている気がします。
若いひと達にアンティークをもっと知って貰いたいですね」

そんなことをおっしゃるので、
「店をただ覗いてくれるだけでも仕事をひとつ果たしたのかなって気持ちになるんです」
と私が言うと、とても嬉しそうに頷いてくれました。

 

想いを持ったひと達が、
場所は違ってもみんなで〝何か〟をつくっている。

嬉しくて涙が出そう。

みんながんばれ。

 

どうぞ良い世界が訪れますように。

 

最後になりましたが、
本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 

 

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